日本園芸協会 日本園芸協会

 園芸ファン通信 VOL.65

日本海沿岸地方では記録的な積雪が記録され、その他の地方でも厳しい寒さが続いています。
例年ですと、そろそろ花の便りが届く頃なのですが、沖縄のヒカンザクラを除いてはもう少し先になるようです。
とはいえ、陽だまりでは光の強さが感じられるようになっています。春の作業の準備は早めに済ませるようにしましょう。

キャッツポー■冬のオーストラリア産花鉢物とその管理

これから春にかけては、オーストラリア産の鉢物が多くなります。
時期的に花の少ない冬に開花期を迎えるので、鉢物に重宝されるようです。
ただ、オーストラリアの植物は北半球の植物とは性質が違うことが多くありますので、注意しましょう。



写真はカンガルーポーよりも一回り小型のキャッツポー(A.humilis)。
(撮影 日本園芸協会理事長 浅井三郎)
アニゴザントスの自生状態。
この仲間は水はけのよい有機質の多い土地に生える種類もある。


●アニゴザントス(Anigozanthos)
ハエモドルム科の常緑多年草です。一般にはカンガルーポー(A.manglesii)が有名です。
水切れには要注意。

●グレヴィレア(Grevillea)
ヤマモガシ科の常緑低木です。「ピグミーダンサー」という名前で鉢物が販売されています。
なるべく枝を切らずに育てます(込みすぎたところは枝を間引く)。

アニゴザントス  グレヴィレア
(写真左:アニゴザントス、右:グレヴィレア)

●ボロニア 
ミカン科の常緑低木です。花が星型のピンナータ(B.pinnnata)と鐘状のヘテロフィラ(B.heterophylla)があります。
花後に茎を1/3〜1/2切り詰めます。

●レケナウルティア(Leschenaultia)
クサトベラ科の草状の常緑低木です。初恋草の名前が付いています。
花後に枝の間引きと、切りつめ(1/2くらい)をします。
ボロニア・ピンナータ  レケナウルティア
(写真左:ボロニア・ピンナータ、右:レケナウルティア)

ボロニア・ピンナータ
西オーストラリア州パース近郊のヤマモガシ科の自生状態(写真はコノスペルムム属の1種)。
ヤマモガシ科の樹木は小石混じりや砂がちの乾き気味の原野に生えていることが多い
(撮影 日本園芸協会理事長 浅井三郎)


<栽培の注意点>
○暑さと寒さを避ける
 
冬は4、5℃以上の保てる日当たりで。夏は雨のあたらない風通しのよい涼しいところで、水やりは少なめに。
○多湿と乾燥させない 
多湿も乾燥も嫌います。水はけのよい用土で、土の表面が乾いてきてからたっぷりと水やりするのが基本。
低温の場合は、さらに1日おいてから。
○燐酸肥料を避ける 
肥料は少なめが無難です。特に燐酸肥料を与えると根を傷めることがあるので、骨粉や過燐酸石灰は避けます。


■冬の花鉢物を長く楽しむ方法

冬の花鉢物のなかには、一通り花が咲き終わっても、花茎を切り戻しすると、もう一度花を咲かせてくれるものがあります。

●エラチオールベゴニア 
暮れから咲きつづけていたエラチオールベゴニアも、枝先まで花が咲き進むと、新しく咲く花が少なくなります。
そうした株は、枝を根元近くの2、3節まで切り戻すと、その下から新しく芽を吹き、再び花を咲かせだしてくれます。
切り戻したら、規定の倍に薄めた液肥を10日ごとに与えます。
なお、枝を切り詰めると土の乾きが悪くなるので、水やりの代わりに霧吹きで葉水を与えるとよいでしょう。
エラチオールベゴニア
(写真:エラチオールベゴニア)

●サイネリア 
今の時期に花が終わったサイネリアは、花茎を切り戻せばもう1回花を咲かせます(ただし、春遅くなってからでは駄目)。株元の脇芽に葉を3、4枚付けて茎を切り戻し、同時に一回り大きな鉢に根鉢を崩さないように植え替えます。株が落ちついてきたら、10日に1回くらい液肥を与えればよいでしょう。1か月〜1.5か月で咲いてくれるはずです。

●カルセオラリアも同様の方法で再生させられます。

●そのほかの鉢物の管理 
開花期の長いシクラメンやプリムラ類などはまだまだ咲き続けてくれますし、マーガレット、ユリオプシスデージー、オステオスペルマムは花の盛期です。花がらつみと追肥を忘れないようにしましょう。
また、花が終わったシャコバサボテン、カランコエ、ポインセチアは暖かくなるまで水やりを控えめにして過ごさせます。
ボロニア・ピンナータ  レケナウルティア
(写真左:立ち性のカルセオラリアも切り戻せば、再度花茎が伸びてくる。
右:最近人気が復活してきたプリムラ・シネンシス。水切れに注意。)



■クリスマスローズの新花を作ろう 

クリスマスローズの花は、雌しべ(花の真ん中で、突き出ている部分)が先に熟し、その後に雄しべ(雌しべの付け根くらいに多数ついている)が熟します。

<交配の仕方>

◆母親(種子親)には元気のよい株の開き始めの花を選び、成熟していない雄しべ(花粉の出ていない)をピンセットで摘み取ります。このとき、雌しべを傷つけないようにしましょう。

◆父親(花粉親)には、花が開いて2、3日めの花粉がよくでているものを選びます。綿棒などに花粉をつけて、それを母親にする花の雌しべの先に軽くこすりつけます。

・交配が終わったら、蜂などがほかの花の花粉を持ってこないように、網袋などを被せます。交配の記録(両親と交配日付け)をラベルに書いてその花に付けておきます。

◆種子を成らせると、株が弱りますので1株にあまり多く種子を成らせるのはやめましょう。網袋は10日ほどつけておけばよいでしょう。

◆種子は、2〜3か月で熟します。熟すと莢(さや)が割れて種子が落ちてしまいますので、莢がかさついてきて色が変わってきたら莢ごと切り取るのですが、タイミングがわからない間は、莢が大きくなってきたら、再度網袋を被せるようにするとよいでしょう。

◆交配には、よい親を選ぶことが大切です。色の濃いもの(または薄いもの)同士、丸弁で花形のよいものなど、改良の目的によって選びましょう。八重咲きを狙う場合は、八重咲き同士、または八重咲きとセミダブルなど、弁数の多い花を親にするようにします。ヴェリジコルス(H.visicarius)やチベタヌス(H.thibetanus)などまだ交配例が少ない原種を親に選ぶという手もあります(その分、交配が難しいこともある)。なお、交配は1回で必ず成功するとは限りません。母親と父親を逆にするとよい場合もありますので、いろいろとチャレンジしてみましょう。


■季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
園芸店では、スイセンやチューリップなどの球根類の鉢物が売られていても、花壇ではまだ、芽が出るかでないかといったところです。ポットやプランター植えの場合は、土が乾いてきたら水やりを忘れずに。
これから、陽が強くなるにつれ、パンジーやロベリアなどの草花は株のボリュームが大きくなります。
隣の株と葉が接するようになったら注意信号。気温が上昇したときに、葉や枝が交差したところが蒸れて枝枯れを起こしやすいのです。茂りすぎたところは早めに枝を元から整理してやると、枝の更新にもなり、花数も増えてきます。。

<花木・庭木>
これだけ寒い日が続くと、蕾の膨らんだウメもなかなか咲き出す勇気がわかないような感じですね。
でも、ロウバイはそろそろ終わりにかかりだし、ミツマタやジンチョウゲの蕾もかすかに膨らみ始めたようです。
寒肥や冬の薬剤散布、生垣の根切り、バラや落葉樹の剪定を済まされていない方は、早めに行なうようにしましょう。

<花鉢物・観葉植物>
冬越しのために室内に取り入れたクンシランやクジャクサボテン、観葉植物などは元気にしていますか。
冬の間は休眠期で、水やりは少なめでよかったのですが、春が近づくと活動が始まります。
芽が動き出してきたら、徐々に水やりを増やしてゆきましょう。
また、冬の初めころに入手したシクラメンやプリムラ類など花がつぎつぎに咲きだすタイプの鉢物は、花がら摘みと定期的な追肥を忘れずにおこないましょう。


<家庭菜園・ハーブ>
種子まきは、霜が降りている間は露地ではできません。この時期もビニルトンネルを利用した種子まきになります。
ニンジン、コマツナ、カブ、ダイコンなどは今の時期からビニルハウスで種子がまけます。  
また、そろそろジャガイモの植え付け時期になります。種イモを購入する場合は、まだ芽が動いていない中くらいの大きさの種イモを選び、植え付けまでは冷暗所で保管しておきます。



日本園芸協会のホームページには役立つ園芸情報をたくさん掲載しています。
毎月の植物の手入れ方法をご紹介する「季節の園芸作業」はこちらから。

http://www.gardening.or.jp/colum/index.html

植物に関するいろいろな情報を満載したサイト「植物博物館」です。
植物を鑑賞したり、図鑑のように調べたり、様々な情報を無料で得ることができます。

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