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 園芸ファン通信 VOL.74 【12月号】

あまり秋めいた感じにならないうちに、街中ではクリスマスの装いが目に付くようになってきました。
いよいよ師走ですね。今年一年、あなた様のガーデニングはうまくいかれましたでしょうか。

■冬咲きの球根類

最近、マッソニアやポリキセナ、ラケナリアなどの冬咲きの球根類が人気を呼んでいるようで、園芸店でも販売も多くなってきているようです。 これらは、南アフリカ原産ですが、同国産のフリージアなどよりも寒さには強く、関東地方南部くらいならば、戸外の強い霜に当たらない軒下などで育てられます。寒さが心配な地域では室内で管理したほうがよいでしょう。水やりは、鉢の表面が乾いてきてからたっぷりと与えるようにし、花つきの鉢の場合は、肥料は与えなくてもよいでしょう。春後半になり、葉が枯れはじめたら、水やりを控え、夏は鉢のまま、水を切って管理します。9月になったら、水やりを再開し、マグアンプKなどの緩効性粒状肥料を4、5粒鉢の表面にばらまきます。植替えは2年に1回くらい夏の終わり頃が適期です。

●マッソニア・プスツラータ(Massonia pustulata)
マッソニア・ロンギペスの名前で販売されることがあります。雄しべが美しく、2週間くらい鑑賞期間があります。
分球しないので、種まきでふやします。秋まきで、2〜3年で開花します。

赤黒い模様の入った葉も観賞価値がある
赤黒い模様の入った葉も観賞価値がある


●ポリキセナ・エンシフォィア(Polyxena ensifolia)
白花種と桃花種があります。マッソニアよりも寒さに強く、多少の霜には耐えられます。
強健で分球でも増えます。種まきなら2年で開花。

花がやや大輪で、性質も桃より強い感じ
白よりもやや遅咲き
写真左:エンシフォリア白 花がやや大輪で、性質も桃より強い感じ
写真右:エンシフォリア桃 白よりもやや遅咲き

●ラケナリア(Lachenaria)
100種近く原種がありますが、流通しているのはレフレクサ(L.reflexa)とルビダ(L.rubida)、
ビリディフロー(L.viridiflora)が多いようです。交配種もあります。
霜に当てると葉が痛みますので、注意しましょう。

この仲間では大輪で、霜に当てなければ丈夫
この仲間の中では早咲き
写真左:レフレクサ この仲間では大輪で、霜に当てなければ丈夫。
写真右:ルビダ この仲間の中では早咲き(11月〜12月咲き)


■クリスマスの花鉢物の手入れ

冬の室内を暖かく飾ってくれる鉢物類が盛りになっています。
鉢物を購入するときは、なるべく商品の回転の早いお店で、入荷したてのものを選びましょう。
お店に長く置いてあったものや、店外の吹きっさらしの場所に置いてあったものなどは、傷んでいることがありますので注意しましょう。一度痛むと、回復させるのはなかなか困難です。
早めに入手した鉢物はそろそろ液肥を施す時期です。
また、咲き終わった花がらは、まめに摘み、株の負担を少なくしてあげましょう。

●シクラメン 
入手して花が咲き進んできたら、葉組みをしましょう。
花茎を真中に集め、替わりに大きな葉を外側に持ってきます。
そうすると光が中にまで入るようになり、花が途切れなく咲き続けてくれます。
枯れた花や黄色くなった葉は、強引に引っ張って抜かず、しおれて抜けるようになってから指で軽くねじって摘み取りましょう。夜間温度6、7℃くらいのところがベストです。

●クリスマスベゴニア
春まで長く咲き続けてくれる種類です。花がらをこまめに摘み、液肥を2週間に1回ほど与えます。
ベゴニア・エラリオールベ(リーガースベゴニア)も同様です。
ベゴニア類は、高めの温度(夜間温度12、3℃)を好みますので、やや暖かい部屋に置きましょう。

●クリスマスカクタス
空気が乾燥すると蕾が落ちやすいですから、シリンジをこまめにするか、夜だけポリ袋を頭からかぶせて鉢元を軽く縛っておくとよいでしょう。1季咲きですから肥料は必要ありません。

●ポインセチア
過湿にすると根が傷み、下葉から枯れてきますので、水やりは鉢土が白く乾いてきて葉が少ししおれかけてきてから与えるようにします。また、水を与えた日の夜は14、5℃が保てる部屋に移すようにします。肥料は必要ありません。

●クリスマスローズ
この時期に咲くヘレボルス・ニゲル(本来のクリスマスローズ)と、本来は春咲きのヘレボルス・オリエンタリス(レンテンローズ)とその交配種が出回り始めています。耐寒性が強いので、露地で咲かせられますが、鉢が小さくなっているものが多いので、水切れには注しましょう。

●プリムラ類
オブコニカはシクラメンと同じ葉組みをしましょう。
ポリアンサは、葉の裏から花が上がることがありますから、花を真中に集めるようにし、終わった花は先の細いハサミで柄の下のほうから切り取ります。
また、オブコニカやマラコイデスで花茎が多く上がってきたら、先に咲いた茎から切り取って切花にして楽しむようにすると、次から次に花が咲きつづけてくれます。

●シンビジウム
花は咲き進むまではよく日に当てるようにします。蕾が全部開いたら場所を移してもよいでしょう。
この段階で切花にすると、株の回復が早くなります。また、しおれた花は1つずつこまめに摘み取りましょう。


■正月用の鉢物の手入れ

お正月にはやはり、和風の鉢物がふさわしいですね。
梅、放春花(ボケ)、福寿草、松竹梅や七草の寄せ植え、千両、万両、唐橘(カラタチバナ)などなど。
名前だけで目出たさ、福々しさが感じられるような気がします。

さて、今の時期に販売されているキク苗は、9月ごろに挿し芽された「秋苗」です。
入手したらなるべく早めに鉢に植えつけます。

<入手した鉢の手入れポイント>

・置き場所
よく日が当り、強い風の当らないところ。室内に置く場合は、直接暖房の風が当らないところを選びます。ウメなどで蕾が大きくなっている鉢は、温かい室内に置いておくと正月前に咲いてしまうことがあります。この場合は、やや温度の低いところで管理しておきます。

・水やり
土の表面が乾いてきたら、たっぷりとあたえます。

・霧吹き
空気が乾燥している室内に置くと、蕾が落ちたり、うまく蕾が開かない場合がありますが、これは湿度不足。朝晩、霧吹きで軽くスプレーしてやれば、ちゃんと咲いてくれるはずです。固い蕾は、ピンセットなどで蕾の先を少し開いてやると、咲きやすくなります。

・花後の管理
花が終わった鉢は、外に出しましょう。マンリョウなどは関東以北では寒がりますので、室内の明るい窓辺などで春まですごさせます。実はそのままつけておくと、株が弱りますので、2月になったら摘むようにします。

{注意} 
フクジュソウの長い根を切り詰めて、無理やり鉢におさめた寄せ植えに気をつけましょう。
根から水が吸えず花が開かないで終わってしまうのです。
見た目で見分けるのは、まずできません(ちょっと蕾が元気なくしおれ加減ですが)。
いつも利用している信用できるお店で求めるようにしましょう。
なお、フクジュソウの鉢植えは、春になったら一回り大きな鉢か庭に下ろします。


■モミジ・カエデ類の剪定

庭のお手入れはおすみですか(まだの場合は、前号、前々号参照)。余裕があるようならば、モミジ・カエデ類の剪定をすませておきましょう。

モミジ・カエデ類は根の活動が早く樹液の流れが早いので、剪定は落葉後早めに、できたら年内にすませておきたい種類なのです(遅くても1月いっぱいくらい)。

もともと自然樹形で育てる樹種ですから、強い剪定は必要なく、夏に出た徒長枝や立ち枝、伸びすぎた枝、込みすぎたところの枝の整理程度です。太い枝を切ると枯れ込みやすく、くさりが入って洞(うろ)になってしまうことがあります。太枝を切るときは、枝の根元から切り、切口にはツギロウなどの癒合剤を塗るとよいでしょう。


■落葉果樹・庭木の植えつけ

落葉の果樹や花木・庭木の植えつけは、葉が落ち休眠に入った今の時期が好期です(12月いっぱいまで)。ただ、今年は寒くなるのが早かったので、関東以北では、春になってからがよいでしょう。  

<植えられる種類>
ウメモドキ、オオデマリ、ガマズミ類、モクレン・コブシ類、カエデ、ボケ、カイドウ、サクラ類、果樹ではウメ、モモ、リンゴ、ナシ、クリ、カキ、ブドウなどが植え時です。

<よい庭木の条件>
・木の形のよいもの
・枝が四方に伸びているもの
・幹肌が生き生きしているもの
・根鉢がある程度大きく、細根が多数ついているもの
・太い根を切った痕がないもの。

<植木の植え方>
(1)根鉢よりも大きめの植え穴を掘る(深さは根鉢の高さよりも深く)
(2)底に堆肥を入れ(苗木の場合は化成肥料も少量を入れる)少し土を戻す
(3)根元が地面の高さよりも多少高くなる程度で植木をすえる
(4)土を8分目くらい入れて、水をたっぷりと注ぐ
(5)根鉢を棒で突き、土を根の周りに行き渡らせる
(6)土を元の高さまで戻す
(7)植え穴の周囲に丸く土手状に土を盛って(水鉢)、その中にもう一度水を十分に注ぐ
この方法は土極めといい、マツ類やナンテンなどは水を使わない植え方をします(土極め)
なお、1本立ての果樹苗は、幹を切り詰めて植えつけます。。


■季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
冬花壇の草花の生育はいかがですか。パンジーやビオラ、デージー、ハボタンは耐寒性が強いので、根付いてしまえば多少霜が降りても大丈夫ですが、スイ―トアリッサムやクリサンセマム・ムルチコーレはやや寒さに弱いので、霜よけや風除けを作るか、軒下に移すのが無難です。
球根では、ユリやスイセンが植えられます。

<花木・庭木>
マツ類の“もみ上げ(古葉とり)”は早めに済ませて、正月をきれいな庭で迎えましょう。また、チャボヒバ、イトヒバ、スイリュウヒバなどのヒバ類も庭の格を高めてくれる樹木です。一緒に手入れをすれば、庭がより見事になります。庭木を植えつけるときは、厳冬期になる前に行います。

<花鉢物>
庭を早めに冬支度しなければならなかっただけに、室内は花鉢物で飾りたいですね。定番のシクラメンにプリムラ類、花期の長いシンビジウムやデンドロビウムなどの洋ラン類、クリスマスに欠かせないポインセチアやクリスマスカクタス(シャコバサボテン)、クリスマスベゴニアなどが豊富に出回っています。良質の株を入手することが、鉢物を長持ちさせる秘訣。

<家庭菜園・ハーブ>
秋菜園やハーブガーデンもそろそろ冬支度ですね。
夏秋まきのネギやニンジン、タカナ、カラシナなどの収穫時期です。あまった野菜類は土寄せをすれば、しばらく保てます。また、ホウレンソウやコマツナなどには霜よけをつくってやりましょう。
地上部が枯れてきたハーブ類は株元で切り取り、根元を腐葉土や堆肥でマルチングしておきます。まだ取り入れていない非耐寒性のハーブがあれば、早めに室内やフレームなどに取り入れます。



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