日本園芸協会
園芸ファン通信 VOL.88 【2月号】

 去年が記録的な暖冬だったので、今年はちょっと寒さ厳しいように感じますね(本当は平年なみなのかもしれませね)。雪も多いように思えます。でも、日差しの強さは春が近づいていることを教えてくれます。庭では早咲きの球根類が咲きだしました。春の園芸作業の準備は早めに済ませるようにしましょう。


★今号の記事一覧
【1】種類がふえて、よりカラフルになった「春の使者・マーガレット」
【2】人気の出てきた「春を先取り・大輪系エリカ」
【3】春によい花を咲かせるために欠かせない「一年のスタート・バラの冬の手入れ」
【4】長持ちさせる花鉢物の管理「アザレア・シネラリア・フリージアほか」
【5】「季節の手入れポイント」


種類がふえてよりカラフルになった
春の使者・マーガレット  

 純白の清楚な花姿で、春を告げてくれる花鉢物として人気があります。根元が木化するのが特徴です。原産は大西洋のカナリア諸島。基本は白色の一重ですが、桃色、黄色や八重咲きの品種も普及してきました。寒さには比較的強く、強い霜や寒さに当てなければ、路地で越冬します(東京以南)。


 
▲マーガレット・アンジェリック・ホワイト   ▲マーガレット。アンジェリック・ボルド
<栽培のポイント>
・置き場所・・・日当たりで、寒風の当たらない陽だまり。寒冷地ではよく日のあたる窓辺など。
・水やり・・・冬は控えめがよいのですが、花が咲いている間は、水切れさせないように注意します。鉢の表面の土が乾いてきたら、たっぷりと与えます。
・肥料・・・開花時期(2〜4、5月)と秋(9〜11月)に月1回マグアンプKなどの緩効性固形肥料を一つまみほど与えます。液肥なら月2、3回。
・病虫害・・・アブラムシがつきます。発生したらオルトラン(粒剤や水和剤)で駆除します。
・植え替え・・・小さいポットに植えられているものは、根詰まりしている場合が多いので、入手したら根鉢を崩さずに一回り大きな容器に植えなおすとよいでしょう。植え替えは年に1回(花の終わった5月頃)。
・挿し芽・・・マーガレットは元気だった株が急に弱って枯れてしまうことがあります。挿し芽でよく発根しますから、予備の株を作っておきましょう。適期は5、6月と9月下旬〜10月中旬。
・夏越し・・・マーガレットは高温多湿に弱い面があります。夏は通風のよい半日陰で過ごさせます。

 
人気の出てきた
春を先取り・大輪系エリカ


春先の鉢物として定番のエリカ(Erica)の仲間。筒・鐘状の可憐な花が人気を呼んでいます。エリカはツツジ科の常緑低木で、ヨーロッパ原産の小輪系の系統と、花色が鮮やかで小〜大輪系まである南アフリカ原産の系統があります。今回紹介するエリカは、大輪の南アフリカの系統です。夏の高温多湿に弱いので、夏はやや乾かしぎみに管理するのがポイントです。

   

●エリカ・アビエティナ(E.abietina) 分枝力が強くよく茂ります。花が終わったら、茎を半分くらいに間引き(先も詰める)、通風をよくするようにします。   ●エリカ・パターソニア(E.patersonia) 直立性の性質です。そのまま伸ばすと丈が長くなるので、花後の切り詰めは欠かせません。   ●エリカ・クリスマスパレード(E.×hiemalis) 来歴不明の交配種で、南アフリカの系統と考えられています。花期が長く、初夏まで楽しめます。
<栽培のポイント>
・置き場所・・・冬は0℃くらいが保てる日当たりで、強い霜には当たらないところ。夏は雨のあたらない風通しのよい涼しいところで、水やりは少なめに。
・水やり・・・多湿も乾燥も嫌います。水はけのよい用土で、土の表面が乾いてきてからたっぷりと水やりするのが基本。低温の場合は、さらに1日おいてから。
・施肥・・・多肥は禁物です。春(花後)と秋に緩効性の固形肥料を一つまみほど与える程度でよいでしょう。
・ふやし方・・・挿し木が簡単です。花後に枝を7、8cmほどに切って清潔な鹿沼土に挿せば1〜2か月で発根します(秋挿しもできます)。


春によい花を咲かせるために欠かせない   
1年のスタート・バラの冬の手入れ 


  バラで欠かせないのが冬の剪定と寒肥。時期は休眠中ならばいつでもよいのですが、2月中に済ませるのがベスト。寒さの厳しい地方では3月一杯くらいを目途にしましょう。

<イングリッシュローズなどのシュラブローズ(半つる性バラ)の剪定>
@枯れ枝・茎や鉛筆より細い茎を元から切り落とします。  
A根元から強いシュートが出ていれば、3、4年経た古い元気のない幹を元から切り落とします(シュートが出ていない場合は残します)。新しいシュートが多数出ている場合は、バランスを見て整理します。  
B内側に伸びている懐枝や込みすぎているところの茎を整理します。  
C新しいシュートは地際から60〜120cmくらいに切り詰めます(大きく伸びる品種は長めに、伸びの小さい品種や庭の都合で大きくできない場合は短めに切ります)。古いシュートは去年の春に伸びた部分を10〜15センチくらい残して切り詰めます。  
D切り詰めるときは、内側に付いている芽のところから、7、8ミリ上で切り詰めます。イングリッシュローズなどのシュラブロース(半つる性バラ)は芽が斜めに伸びますので、外側の芽を残すと茎が倒れやすくなります。  
E幹は、同じ長さに揃えるのではなく、多少段をつけるようにすると、花が咲いたときにきれいに見えます。  
F剪定した後に石灰硫黄合剤(8〜10倍)を散布しておくと、春以降の病気の発生が少なくなります。
 
ガートルード・ジェキル
Gertrude Jekyll イギリス・オースチン作出の イングリッシュ・ローズ
  ▲イエロー・ダグマー・ハストラップ
Yellow Dagmar Hastrup アメリカ・ムーア作出の モダン・シュラブローズ
<ハイブリッド・ティーローズなどのブッシュローズ(木バラ)の剪定> 
ハイブリッド・ティー系やフロリバンダローズなどのブッシュローズ(木バラ)の場合は、幹を短めに切り詰め、外側の芽を残すように剪定するのがポイントです。 <ツルバラ(大輪系)の剪定と誘引>
@枯れ枝や小枝、細枝を切り取り、ツルの先を30〜40センチ切り詰めます(充実した外芽<外側に向いた芽>の上で切ります)。
A古いツル(3年め以前の枝)は花を付けにくいので、不要な古いツルは元からノコギリで切り落とします。古いツルから、元気よく新しい枝が伸びている場合は、その新しい枝のところまで切り戻します。
B残したツルの小枝は2、3芽残して切り詰めます。
C残したツルをなるべく水平になるように誘引し、紐で固定します。
Dツルとツルはなるべく交差しないように配置し、ツルの上下の間隔は30センチくらい取ります。  中・小輪系は、古いツルにもよく花をつけるので、無理に切り取ることはありません。ほかは、大輪系と同じです。   

<寒肥(元肥)の施し方>  
バラは肥料が好きな樹種です。まだ寒肥(元肥)を施していない場合は、なるべく早めに施しましょう。1株当り油粕、骨粉、過燐酸石灰各300gを牛糞や堆肥(15リットルくらい)に混ぜ、株元から4、50センチ離して溝を掘り土に混ぜ込みます。
長持ちさせる花鉢物の管理
アザレア・シネラリア・フリージアほか


冬の室内を明るく飾ってくれた花鉢物は、これからの手入れしだいで楽しめる期間が違ってきます。

●アザレア  花が咲き始めたら、つぼみの殻を始末し、花がしぼんだら、こまめに根元から摘み取ります。花がらを残しておくとカビが生え、病気の元になります。水やりは葉や花にかけないように。



  アザレア「ステラマリス」

●フリージア 寒風に弱いので外には出さず、室内の日の当たるところで管理。水やりは鉢の表面が乾いてきてから、晴れた日の午前中に行なう。



●エラチオール・ベゴニア 枝先まで花が咲き進んだら、枝を根元近くの2、3節まで切り戻す。切り戻した後、規定の倍に薄めた液肥を10日ごとに与えると、新しく芽が吹き、再び花が咲かきだすようになる。なお、枝を切り詰めると土の乾きが悪くなるので、水やりの代わりに霧吹きで葉水を与えるようにする。



  エラチオールベゴニアは、花が終わった茎から切り戻す。

●シネラリア(サイネリア)  サイネリアは、花茎を切り戻せばもう1回花を咲くので(ただし、春遅くなってからでは駄目)、株元の脇芽に葉を3、4枚付けて茎を切り戻し、同時に一回り大きな鉢に根鉢を崩さないように植え替える。1週間ほどしたら、10日に1回くらい液肥を与える。カルセオラリアも同様の方法で再生させられます。



●シクラメン、プリムラ・オブコニカ  葉組をして、花茎を中心に集め、また大きい葉を外側によせ、光が中に入るようにします。咲き終わった花や黄色くなった葉は、無理に引っ張らず、少し萎れてから、根元をひねって抜き取るようにします。




  プリムラ・オブコニカは葉組みを治すようにする

●追肥と花がら摘み  花が次々と咲き上がってくるタイプの鉢物には、追肥を与えましょう。液肥なら、10日おきくらいです。また、花がら摘みも忘れずに。プリムラ類、シクラメン、マーガレットにはかかせません。



●そのほか  ポインセチアは低温と過湿に注意。低温(5、6℃くらい)で越冬させているハイビスカスやブーゲンビレアは落葉しても枝が緑色ならば大丈夫。枯れていないので、7〜10日に1度くらい水やりしましょう。

季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
 庭の陽だまりでは、早咲きの球根類が咲き始めます。クリスマスローズの仲間や寒咲きクロッカスやスノードロップ、スイセンなどが蕾を伸ばしだしますので、枯れ葉などがかぶさっているところは早めに取り除きましょう。これから、日差しが強くなるにつれ、パンジーやロベリアなどの草花は株のボリュームが大きくなります。隣の株と葉が接するようになったら注意信号。気温が上昇したときに、葉や枝が交差したところが蒸れて枝枯れを起こしやすいのです。茂りすぎたところは早めに枝を元から整理してやると、枝の更新にもなり、花数も増えてきます。同時に、花がらを摘み、追肥として、緩効性の固形肥料を2か月に1回与えます。



<花木・庭木>
 沖縄からはヒカンザクラ(緋寒桜)の花便りが届き、庭でもロウバイに続き、早咲きのウメが咲き初めてきたようです。  花木・庭木類の寒肥や冬の薬剤散布を済ましていない方は、早めにに行なうようにしましょう。落葉樹の剪定を済ませていない方は、3月初旬くらいまでに済ませましょう。



  そろそろウメも咲きだします

<花鉢物>
 園芸店の装いも、アザレア、プリムラ類、シネラリア(サイネリア)、マーガレット、球根類など春の花に変わってきます。時期的に風が強いことが多いので、店先に長く置かれていた鉢は傷んでいるものがあります。一度水切れを起こすと、葉に縮れができたり、下葉が黄色くなったりします。見た目はそれほどダメージを受けているように見えなくても、花の持ちが悪くなることが多いので注意しましょう。



<家庭菜園・ハーブ>
 家庭菜園はまだ休眠の時期。土寄せし収穫を遅くしている野菜や、ビニルトンネルやべたがけシートをかけて栽培してきたホウレンソウやシュンギクなども減ってきましたね。そろそろ、春〜初夏収穫用に、ビニルトンネルを利用して、コマツナ、カブ、ダイコンなどの種子をまきましょう。2月の中旬になれば、ジャガイモの植え付けができます。市販の種イモで、まだ芽が動いていないものを早めに入手し、温度の低いところで植え付けまで保管しましょう。


日本園芸協会のホームページには役立つ園芸情報をたくさん掲載しています。
毎月の植物の手入れ方法をご紹介する「季節の園芸作業」はこちらから。
http://www.gardening.or.jp/colum/index.html


植物に関するいろいろな情報を満載したサイト「植物博物館」です。
植物を鑑賞したり、図鑑のように調べたり、様々な情報を無料で得ることができます。
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