日本園芸協会
園芸ファン通信 VOL.93 【7月号】

 西日本では梅雨明けした地方も出ており(沖縄・奄美地方はだいぶ前に梅雨明けしていますが)、今年の梅雨はこのまま終わってしまうのでしょうか。梅雨が明けると、いよいよ熱帯地方よりも蒸し暑いといわれる‘日本の夏’が始まります。


★今号の記事一覧★
【特集1】夏に涼を呼ぶ
【特集2】花壇に適する熱帯原産の草花
【特集3】早めの鉢替えが長持ちさせるポイント
【特集4】植えて短期間に花が咲く
【特集5】季節の手入れポイント

夏に涼を呼ぶ
水草の楽しみ方

 庭やベランダに、小さくても池を設けると、雰囲気が変わりますね。その中に、水草などを植えれば、ちょっとしたビオトープガーデンになります。

●池
 本格的な池がなくても陶器の色合いに似せたプラスチック池が出回っています。これを利用するのもよいでしょう。

●水草の種類*括弧の中は鑑賞部位

湿地性の種類
ハンゲショウ(葉)、ミソハギ(花)、シラサギスゲ(花)、トクサ(茎)、セキショウ(葉)。
水深の浅い池向きの種類
パピルス(葉)、フイリヨシ(葉)、ポンテデリア(花と葉)、ガマ(葉)、フトイ(葉)、オモダカ(葉と花)、クワイ(葉)、チャワンバス(花と葉)、ミズワラビ(葉。
浮遊性の種類
ボタンウキクサ(葉)、ホテイアオイ(葉と花)。
浮葉性の種類
スイレン(花)、コウホネ(葉)、ウォーターポピー(花)。

●植え方
 植物は直接池に植えるのではなく、一つの種類ずつ鉢に植えて、池に入れると管理が楽です。土は田土か荒木田土がよいのですが、なければ赤玉土でもよいでしょう。 それぞれ、腐葉土を2、3割ほど混ぜて用います。花物以外は、締めて小さく育てる方が風情がありますので、肥料は入れません。

●鉢の置き方
 鉢の下にレンガを置いたり、高さの違う鉢を用いて、高低の変化をつけましょう。また、湿地性の種類は根元が水面からちょっと出るように、浅い池向きの種類は鉢の表面が水面から4、5センチ、浮葉性の種類は水面から10センチほど下になるように配置します。

●管理
 ボウフラの予防用に金魚やメダカを飼う場合は水温が上がり過ぎないように注意しましょう。水が汚れたり藻が繁殖するようなら、2、3週間に1回、半量くらいずつ水替えします。

▲ハンゲショウ(ドクダミ科)
花が咲くころ(7月)に上部の葉2、3枚が半分くらい白くなります。

▲ポンテデリア・コルダータ(ミズアオイ科)
やや大型(高さ1mくらい)の耐寒性宿根草。花がきれいなので最近良く見かけます。北アメリカ原産。

▲ミズワラビ(ホウライシダ科)
田んぼの縁などに生える1年生のシダ植物。みずみずしい緑が見所。

▲熱帯スイレン
花茎が水上に出て花が咲くのが特徴。葉が広がるので大きめの池向き。冬は10度 以上保てる水槽で。

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【特集2】花壇に適する熱帯原産の草花

◇ランタナ、クロッサンラ、ペンタス
 熱帯地方よりも蒸し暑いと言われる日本の夏には、熱帯・亜熱帯原産の草花が力を発揮してくれます。今回は、花壇や鉢・プランターで楽しめる草花とその手入れのポントを紹介します。

ランタナ(クマツヅラ科)
 熱帯アメリカ原産の常緑低木。強健で日当たりであれば土質を選びませんが、やや乾き気味がよい。鉢植えの場合は、水はけの良い用土で。花の終わった枝を適当に刈込めば、晩秋まで次々に花が上がってきます。2か月に1回、マグアンプKなどの緩効性粒状肥料をひとつまみ追肥します。

 冬は強い霜の当たらない軒下か、暖房の風の当たらない室内の日当たりで管理します。繁殖は挿し木(適期:晩春か初秋)。

クロッサンドラ(キツネノマゴ科)
 インド原産の草本状の常緑低木。日当たりで水はけのよい土を好みますが、乾燥を嫌いますので、あまり乾かし過ぎないようにします。根の伸びがよいので、鉢植えの場合は入手時に一回り大きな鉢に植えなおすとよいでしょう。

 冬は12、3℃を保てる室内の明るい窓辺で、水を控えめに。繁殖は夏に挿し木をすればよく活着します。

●ペンタス(アカネ科)
 アフリカ・アラビア原産の多年草で、クササンタンカの別名があります。高温には強いのですが、過湿に弱いので、水やりには注意します。伸びすぎた茎は切り戻せば新しく茎が立ちあがってきます。

 鉢植えの場合は、根詰まりしやすいので早めに鉢替えします。冬は5、6℃を保てる室内の明るい窓辺で、水を控えめに。繁殖は夏に挿し芽をすればよく活着します。

▲花色が豊富になったランタナ

▲クロッサンドラ「カガリビ」

▲ペンタス白

▲ペンタス赤

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【特集3】早めの鉢替えが長持ちさせるポイント

◇アサガオとホオズキの鉢物
アサガオやホオズキの鉢物が目立つ季節です。各地のほおずき市や朝顔市で入手された方もおいででしょう。このアサガオやホオズキは本来は真夏の花で、今頃の鉢物は促成で仕立てたもので、鉢植えとして見栄えをよくするために、鉢の大きさよりも多く株が植えられています。そのため、すぐに鉢いっぱいに根が回ってしまい、アサガオでは花の数が少なくなったり、花が小さくなったりします。また、水切れしやすくなり、葉や蕾、果実が落ちたりすることが多くなります。できたら、鉢底から長く根が出てくる前に、1、2回り大きな鉢に植え替えてやりましょう。

 朝ちょっと早起きし、日が照りつける前に鉢からそっと抜き、一回り大きな鉢に植え直します。用土は市販の培養土でよく、用土に肥料を混ぜる必要はありません。行 灯仕立てのアサガオには、行灯の外側に一回り大きな行灯を立て、新しくの伸びてきたツルは外側の行灯に誘導するようにします。植え替えたら、たっぷりと水やりし、その日は半日陰のところに置き、翌日から日のあたる場所に移します。1週間位したら、小さじ一杯くらい、マグアンプKなどの緩効性固形肥料を鉢の表面にばらまけばよいでしょう。

▲行灯作りのアサガオ

▲ホオズキ

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【特集4】植えて短期間に花が咲く

◇秋咲き球根の植えつけ
 土の中から、いきなり蕾をもたげて鮮やかな花を咲かせてくれるリコリスやアマリリス・ベラドンナは、庭の表情を変えさせてくれる魔法の球根類です。今が、この秋咲き球根の植え付け時期です。


<リコリス類>
 ヒガンバナの仲間で、英語では花びらが細長いのでスパイダーリリー。日本や中国原産なのに、なぜかエキゾティックな感じがします。欧米の改良種が出回るようになっています。

植え場所
日当たりと水はけがよい肥沃地。夏に乾燥しないところがベストです。明るい落葉樹の下などでもよい。中国原産とされるヒガンバナやナツズイセンは耐寒性がありますが、日本原産のショウキランやシロバナヒガンバナは関東地方以南の暖地向きです。
植え時期
なるべく早めに、8月中旬には植え付けます。
植え方
植える前にあらかじめ堆肥をすきこんでおき、根を広げて植えること(リコリス類は休眠中も根が生きているので、根を切らないように)。株間は10〜15センチ、覆土は球根1球分。
管理
花後に有機配合肥料を1つかみ株元にすきこめばよいでしょう。
鉢植え
6、7号鉢に3〜5球植え。ナツズイセンなど大球性の種類は1〜3球。植え替えは毎年か2年に1回。夏も土をあまり乾かさないように。

<アマリリス・ベラドンナ>
  南アフリカ原産のユリに似た大輪で香りのよい花を咲かせます。別名はベラドンナリリー。リコリス類よりも寒さに弱いので鉢植えが無難です。関東地方以南の暖地ならば庭植えもできます。

植え時期
早めに植えつけ、遅くとも8月中旬頃までに植えつけます。
用土と鉢
チッソ分の多い用土を嫌うので、市販の培養土ではなく、川砂か赤玉土に腐葉土を2割くらい入れた用土を調合します。鉢は、球根類よりもやや大きい程度の小さめの鉢にします。
植え方
球根の先端がちょっと出るくらいの浅植えにします。
管理
花が咲いたら葉が出てくるので、冬までは戸外の日当たりで管理します。霜が降りる前に室内の凍らない日当たりに取り入れ、春また外に出します。葉が枯れてきたら、日の当たらない涼しい場所に移し、水やりも月に1回くらいにします。
施肥と植え替え
肥料は春と秋にハイポネックスの液肥を月2回ほど与えればよく、植え替えは好まないので3、4年に1回でよいでしょう。

▲造形美で見直されている
ヒガンバナ

▲大形の花で見事な
ナツズイセン

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季節の手入れポイント

【特集5】 季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
 梅雨の間、あまり手入れのできなかった花壇では、病害虫が発生していたり、茂りすぎた株もでてきます。早めに見回って、薬剤散布や害虫の捕殺、茂りすぎた枝の剪定をして、夏に備えましょう。

<花木・庭木>
 ツバキ・サザンカ、ウメ、ツツジ・シャクナゲ類などの春咲きの花木類は、これからの時期に来年の花芽が作ります(これを「花芽分化」といいます)。今の時期に枝を切ったり、肥料をやったりすると、この花芽分化のメカニズムが乱されますので、注意しましょう。株の根元から出た台芽や徒長枝の切り詰めるほかは、特に込みすぎた枝の間引きや、伸びすぎた枝の先を止める程度にします。

<花鉢物>
 梅雨が明けると、多くの鉢物類には厳しい日本の夏が始まります。これまで日当たりに置いていたフクシアや球根ベゴニア、シャコバサボテン、マーガレット、ユーリオプシスデージー、シンビジウムなども強い直射日光の当たらない、半日陰程度の風通りのよい涼しい場所に移しましょう。

 なお、鉢物類の水やりは朝の涼しい時間にたっぷりと与えます。夕方までに土が完全に乾いてしまう場合は、置き場所を変えるか鉢を一回り大きなものに植え直しましょう。

<家庭菜園・ハーブ>
 ナスやトマト、キュウリなど夏野菜の収穫が盛期になります。肥切れさせないように、2〜3週間おきに定期的に追肥をあたえ、根元に土寄せしましょう。また、晴天が続くようになったら、土が乾燥しすぎないように涼しい朝か夕方にたっぷりと水やりしましょう。

 ハーブ類は夏の高温多湿を嫌う種類が多いので、茂りすぎた株は枝を切りすかし、ラベンダーなど、花が終わった株は切り詰めます。

球根ベゴニアは直射日光の当たらない
涼しい場所に移します。

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